タスクの状態
開発者はダウンローダへの要求をアクションとして表現します. アクションには ダウンロード と 削除 の2種類があり, ダウンローダはこれらをタスクとして処理していきます.
ExoPlayer downloaderはタスクの状態を2種類定義しています.
1つはTaskState
として外部に公開される状態で下記の状態と遷移を持ちます.
状態リスト:
State | Description |
---|---|
queued | 開始待機状態 |
started | 開始済み状態 |
completed | 完了状態 |
canceled | キャンセル状態 |
failed | 失敗状態 |
状態遷移:
もう1つは外部に公開されない, DownloadManagerの内部管理用の状態です.
主に, “キャンセル中”や”停止中”といった状態遷移中の状態が定義されています.
内部状態リスト:
State | Description |
---|---|
queued | 開始待機状態 |
started | 開始済み状態 |
completed | 完了状態 |
canceled | キャンセル状態 |
failed | 失敗状態 |
queued_canceling | 開始待機キャンセル中状態 |
started_canceling | 実行キャンセル中状態 |
started_stopping | 実行停止中状態 |
内部状態遷移:
ExoPlayer downloaderを使う上では前者の公開用状態を把握しておけば十分なのですが、ダウンローダの振る舞いを把握するには後者の内部状態を把握しておいた方が理解が進みます。
DownloadManagerのタスク管理と競合
DownloadManagerはタスクの状態変更を DownloadManager.onTaskStateChange
検知します.
ここでタスクの状態がアクティブではない場合, タスクの開始が試みられます.
タスクが下記の条件を満たす場合にはアクティブであると判断されます.
/** Returns whether the task is started. */
public boolean isActive() {
return currentState == STATE_QUEUED_CANCELING
|| currentState == STATE_STARTED
|| currentState == STATE_STARTED_STOPPING
|| currentState == STATE_STARTED_CANCELING;
}
要するにタスクが何かしらのアクション中であればアクティブと判断されます.
DownloadManagerは次の条件が全て満たされていることを確認してタスクを開始します.
- タスクがまだ開始されていないこと(taskstate == queued)
- 既にあるタスクと競合しないこと
- ダウンロードタスクの場合, 先行するダウンロードタスクが保留中ではない. かつ, アクティブダウンロード数の上限に達していないこと
1はわかりやすいですね. 既に開始済みのタスクを再び開始することはできないということです.
DownloadManagerは, タスクの状態に関わらずタスクリストの先頭から順番に開始を試みます. 既に開始済みのタスクはここで除外されます.
3の”アクティブダウンロード数の上限”はDownloadManagerのコンストラクタ引数 maxSimultaneousDownloads
が参照されます.
また, これはダウンロードタスクに課せられる条件で, 削除タスクはこの条件に該当しません.
2は少し複雑です. DownloadManagerは次の2点をチェックしてタスク(アクション)の競合を検知します.
- 同じコンテンツに対するアクションか
- いずれかのアクションが削除アクションであるか
DownloadManagerはタスクリストの先頭から順番に開始を試みる過程で, 同タスクリスト内の他タスクと競合していないかを検知するためにタスク同士を比較します.
タスクが扱うコンテンツの同一性は DownloadAction.isSameMedia
を使って判定され, タスクに紐づくアクションが持つ uri
が同じかどうかで判断されます.
/** Returns whether this is an action for the same media as the {@code other}. */
public boolean isSameMedia(DownloadAction other) {
return uri.equals(other.uri);
}
同じコンテンツに対するアクションがタスクリスト内に複数見つかった場合, 比較元あるいは比較先のタスクのいずれかが削除アクションである場合は “競合した” と判定されます.
例えば, とあるコンテンツAをダウンロード中に, 同コンテンツに対して削除アクションを投げるとこの状態になります.
タスクが競合すると, 比較元が削除アクションであれば比較対象のタスクがキャンセルされ, 比較元の削除タスクもスキップされます(キャンセルはされません).
比較対象のタスクが削除アクションであれば比較元のタスクはスキップされます(キャンセルはされません).
タスクがキャンセルされるとタスクの状態が変化するので DownloadManager.onTaskStateChange
が呼ばれます. DownloadManager.onTaskStateChange
ではタスクの状態がアクティブではない場合にタスクの開始を試みるので, ここで再びタスクの開始が試みられます. スキップされた削除タスクはアクティブにはなっておらず, また競合していたタスクはキャンセルされているので競合は発生しなくなります.
これによって, とあるコンテンツAをダウンロード中に, 同コンテンツに対して削除アクションを投げるとダウンロード処理はキャンセルされて, ダウンロードのキャンセル処理が終了した後に削除処理が行われることになります.
ダウンローダの開始と停止
DownloadServiceが起動されるとRequirementsHelperを登録してデバイス状態の監視を始めます.
デバイスの状態がダウンロード開始条件を満たした場合, いよいよダウンロード処理が開始されます.
DownloadManagerはダウンローダ停止状態を示す downloadsStopped
フィールドを内部に持っています.
このフィールドが false
の時, ダウンロードアクション/タスクが追加されたとしても新しくダウンロードが開始されることはありません.
ダウンローダを開始するには DownloadManager.startDownloads
を呼び出して, このフィールドを true
にする必要があります.
ダウンローダの状態はダウンローダ停止状態がデフォルトですが, 開発者が明示的に DownloadManager.startDownloads
を呼び出してダウンローダを開始する必要はありません.
その理由として, まずDownloadServiceにダウンロードアクションを登録すると, タスクの開始を試みる処理が実行されます.
しかし, このタイミングではダウンローダが停止状態なので, ダウンロードタスクは一旦スキップされます.
スキップされたタスクがどのようにして実行されるのかというと, DownloadServiceがアクション/タスクを追加した後, RequirementsHelperを登録してデバイス状態の監視を始めます.
デバイス状態がダウンロード開始の条件を満たした時, DownloadServiceはDownloadManager.startDownloadsでダウンローダを開始状態にします.
ダウンローダの開始時にはタスクの実行を試みるようになっているので, ここでスキップされたタスクが実行されることになります.
“ダウンロードの開始/停止条件はRequirementsで表現される”と過去の投稿で言いましたが, 厳密には Requirementsはダウンローダの開始条件 になります.
ExoPlayerのダウンローダは開始済みであれば全てのタスクを処理しようとします.
このダウンローダは全てのタスクが消化されたとしても, Requirementsの条件が満たされている限り停止しません.
開発者が手動でDownloadManager.startDownload/stopDownloadを呼び出すときは, Requirementsとの整合性が崩れる可能性がある点に注意しなければいけません.
ちなみに, downloadsStopped
はダウンロードアクションに対するものであり, 削除アクションはダウンローダの開始状態に依存しないため, このフィールドが false
であっても削除アクションは実行されます.
つまり, Requirementsを満たしていない状態でもコンテンツの削除は可能です.